PFAS(有機フッ素化合物)に関して
食品業界において、食品の安全性を確保することは最優先事項です。
その中で、近年注目されている問題の一つが「PFAS(ピーファス)有機フッ素化合物」の存在と管理です。
PFASは、優れた耐久性や撥水・撥油性から多くの食品業界で使用されてきましたが、環境や健康への影響が懸念される「永遠の化学物質」として広く認識されています。
本記事では、食品工場におけるPFASの使用、影響、管理方法について考察します。
PFASとは、炭素とフッ素の強い結合を持つ化学物質群です。
4000種類以上存在し、主に以下のような特性を持っています。
- ・耐熱性、耐化学性:高温や酸・アルカリにも分解されにくい。
- ・撥水性、撥油性:水や油をはじく性質があり、食品包装材や調理器具のコーティングに使用される。
食品業界では、これらの特性を活かして、フライパンのノンスティックコーティングや食品包装材の防油層、機械部品の潤滑剤などに使用されることがあります。
食品工場におけるPFASのリスクは、主に以下の点に関連しています。
①食品への移行
PFASが食品包装材や調理器具から食品に移行する可能性が指摘されています。
特に、加熱や油分の多い食品では、PFASの移行が増加することが報告されています。
②環境への影響
食品工場から排出される廃水や廃棄物にPFASが含まれる場合、それが周囲の土壌や水源を汚染し、持続的な環境問題を引き起こす可能性があります。
③健康への影響
PFASの一部(例:PFOAやPFOS)は、人体において長期間にわたり蓄積し、発がん性やホルモンの乱れ、免疫機能の低下などの健康問題を引き起こす可能性があります。
①原材料と製品の管理
- 使用の最小化:食品包装材や加工設備におけるPFASの使用を最小限に抑える。可能であれば、PFASフリーの代替素材を採用する。
- モニタリング:食品や包装材に含まれるPFASの濃度を定期的に測定し、基準値を超えないように管理する。
②廃棄物処理の改善
- 排水処理:食品工場で使用される水の排水処理システムを強化し、PFASを効率的に除去する技術を導入する。
- 廃棄物管理:PFASを含む廃棄物が環境に直接放出されないよう、適切に処理・管理する。
③作業環境の改善
- 作業者の教育:PFASのリスクについて従業員に教育し、安全な取り扱いを徹底する。
- 保護具の使用:PFASの使用や取り扱い時に適切な保護具を着用し、作業者への影響を最小限に抑える。
④代替技術の導入
- PFASフリー材料の採用:近年開発されている、PFASを使用せずに同様の性能を持つ新素材を採用し、リスクを低減させる。
- イノベーションの活用:ナノテクノロジーや生分解性素材を活用した新しい技術を取り入れ、PFASへの依存を減らす。
世界的にPFASに対する規制が強化されています。
- 欧州連合(EU):PFOAやPFOSなど特定のPFASの使用を制限する法規制を導入。
- アメリカ:食品におけるPFAS含有量の基準値を設定し、食品包装材のPFAS使用を段階的に禁止。
- 日本:2022年に厚生労働省がPFASのリスク評価を開始。国内での規制はまだ限定的だが、国際的な動向に追随する可能性が高い。
食品工場としては、これらの規制を把握し、コンプライアンスを確保することが求められます。
食品工場におけるPFASの取り扱いは、食品の安全性、環境保全、従業員の健康保護という多角的な視点から重要な課題です。
今後は、科学的データに基づいたリスク評価と、規制に対応した技術的な対策が求められます。
また、消費者意識の高まりを背景に、PFASフリー製品の需要が増加しているため、食品業界全体での取り組みが進むことが期待されます。
食品工場がPFAS管理に成功することで、持続可能な食品生産と安心・安全な食品提供が実現されるでしょう。